2023年12月、池袋の鍋ぞう

昨年の12月某日、池袋の鍋ぞうに行った。その日は美容院に行った後、ブックオフに本やグッズを売りに行ったのだが、査定には思いのほか時間がかかるとのことだった。時刻はすでに18時を過ぎており、そろそろ夕飯時だった。まだそれほどお腹は減っていなかったのだが、空き時間を有効活用するために食事にしようと思った。また、あっさりとしたものが食べたかったということもあり、肉よりも野菜が食べたいという気持ちがあった。そこで、ブックオフと同じビルにある唯一の飲食店、鍋ぞうを訪れることにした。

 

鍋ぞうが入居している5階までエスカレーターで上がり、店の入口で店員を待った。入り口からは中の様子は伺えなかった。店員に案内された席に着くと、隣の席の二人組はどうやら中国語を話しているようであった。ふと気になって周囲を見渡すと、他の客も中国人のグループが多いことに気づいた。彼らはどんな人たちだろうと思い少し観察を続けることにした。彼らは観光客ではなく、日常的に日本で生活しているように見えた。彼らが食べている鍋のスープが気になって横目で鍋の中身を見てみた。彼らはすき焼きやしゃぶしゃぶを食べていた。

 

ところで鍋ぞうにはしゃぶしゃぶ、すき焼き、塩とんこつ、旨辛キムチの4種類のスープがある。この4種類のスープの中でも彼らは日本的なすき焼きやしゃぶしゃぶを選んでいた。日本の鍋を選んでいることに少し驚いた。彼らにとって、これらの鍋が特別な意味を持つのか、それとも単なる日常の楽しみなのかはわからない。そういったことは全くわからないが、友人や家族と鍋を囲むのは楽しいのだろう。

 

一方、私は不思議に思った。なぜ日本人の姿が鍋ぞうにほとんど見られないのだろうか? 池袋で日本人が火鍋を食べる店といえば、私の頭にはすぐに小肥羊が浮かぶ。小肥羊では日本人客が多く、友人たちと賑やかに火鍋を囲むのがよくある光景だ。その日の鍋ぞうでの経験から、池袋では日本人が中国の火鍋を楽しみ、中国人が日本のすき焼きを楽しむという、文化交流が起こっていることに気づいた。日本人として、自国にいながら異国の食文化に触れるのは新鮮で、同時に異国で生活する人々が地元の食文化をどのように楽しむのかを知るのも興味深い。

 

この日の夕食は、ただの一食に過ぎなかったかもしれないが、2023年の東京で目撃したこの光景は不思議なもので、私にとっては印象深いものであった。食を通じて、異なる文化がどのように交差し、新たな形を生み出しているのを目の当たりにしたのであった。そして、異なる文化を楽しむ姿勢は人生を豊かにするのに必要なことなのだろうと思ったのであった。