資産形成に関する文献、いろいろ

最近、X(Twitterだったサービス)で下記の記事が流れてきたので、他の書籍も含めて少しレビューを書いておこうと思いました。

hayatoito.github.io

まず、上記の記事の結論としてはeMAXIS Slim 全世界株式といった投資信託を買い続けるべきというものです。いろいろと理屈が付けられて長々と説明がされるのですが、本当にこんなに単純な結論でいいのでしょうか?数式やグラフが並べられているのですが、データに基づいていないという欠点があります。より広く深い見識を得るために2冊の書籍を紹介しましょう。

 

ニック・マジューリ「JUST KEEP BUYING」

1冊目の書籍はニック・マジューリの「JUST KEEP BUYING」です。この本を読んでおけば人生を通じた資産形成について一定の見識を得られるでしょう。

この本の主張をおおざっぱに抜き出すと以下のようになります。

  • 投資に回せる元手がない人はまず収入を上げるべき
  • 収入が上がったとしても生活レベルの上昇はなるべく抑えるべき
  • インフレしても資産が目減りしないように投資を行うべき
  • 自身の労働から得られる価値が減った際に代わりに金融資産から収入を得られるようにする
  • 老後に取り崩す際に好景気か不景気かで大きくリターンが変わる

アメリカ人が書いた本なのでアメリカのデータが使われていますが、過去のデータに基づいたシミュレーションを用いた説明があるため説得力のある一冊になっていると思います。

モシェ・ミレブスキー「人生100年時代の資産管理術 リタイア後のリスクに備える」

2冊目はモシェ・ミレブスキーの「人生100年時代の資産管理術」です。

「JUST KEEP BUYING」と主張の内容としては重複するものもありますが、より精緻な内容の本となっています。この本でも過去のデータに基づくシミュレーションが多用されています。

おおまかに内容を箇条書きすると以下のような感じになるでしょう。

  • 自分自身の仕事が株式型か債権型かを把握してポートフォリオを組むべき
  • 自分自身の仕事の産業セクターを考慮した上でポートフォリオを組むべき
  • 生命保険を利用して人的資本に対するリスクヘッジができる
  • 資産を取り崩すときの景気サイクルはリターンに大きく影響する

この本でもアメリカのデータを用いた議論が展開されますが、翻訳者による日本の読者向けの補足説明がある点がありがたいところです。

ひとつだけ本書の第10章から重要な一文を抜き出しておきましょう。

本章にはさまざまな異なる糸を織り込んできたが、最も訴えたい実用的なポイントは、リタイアした人はほとんどの場合、従来型の商品クラス1つか2つ、普通の投信、あるいは一般的な個人年金だけでは持続可能なリタイア後インカムを賄うことができないということだ。

モシェ・ミレブスキー; 鳥海智絵. 人生100年時代の資産管理術 リタイア後のリスクに備える (日本経済新聞出版) . 株式会社 日本経済新聞出版社. Kindle 版. 

さいごに

株式、投資信託、債権、生命保険、個人年金といった様々な金融商品を組み合わせて資産形成を行う必要があるのですが、それらの特性を理解して資産形成できる人は一握りなんじゃないかという気持ちにさせられます。

そして、今回紹介した書籍とは関係ないですが、世界人口が減少するフェーズに入った場合に世界経済がどうなるかわからないので、少なくともインデックス投信一択の資産形成は避けた方がいいのではないかと個人的には思っています。

(Disclaimer: あくまで個人の見解です。投資は自己責任で)

2023年12月、池袋の鍋ぞう

昨年の12月某日、池袋の鍋ぞうに行った。その日は美容院に行った後、ブックオフに本やグッズを売りに行ったのだが、査定には思いのほか時間がかかるとのことだった。時刻はすでに18時を過ぎており、そろそろ夕飯時だった。まだそれほどお腹は減っていなかったのだが、空き時間を有効活用するために食事にしようと思った。また、あっさりとしたものが食べたかったということもあり、肉よりも野菜が食べたいという気持ちがあった。そこで、ブックオフと同じビルにある唯一の飲食店、鍋ぞうを訪れることにした。

 

鍋ぞうが入居している5階までエスカレーターで上がり、店の入口で店員を待った。入り口からは中の様子は伺えなかった。店員に案内された席に着くと、隣の席の二人組はどうやら中国語を話しているようであった。ふと気になって周囲を見渡すと、他の客も中国人のグループが多いことに気づいた。彼らはどんな人たちだろうと思い少し観察を続けることにした。彼らは観光客ではなく、日常的に日本で生活しているように見えた。彼らが食べている鍋のスープが気になって横目で鍋の中身を見てみた。彼らはすき焼きやしゃぶしゃぶを食べていた。

 

ところで鍋ぞうにはしゃぶしゃぶ、すき焼き、塩とんこつ、旨辛キムチの4種類のスープがある。この4種類のスープの中でも彼らは日本的なすき焼きやしゃぶしゃぶを選んでいた。日本の鍋を選んでいることに少し驚いた。彼らにとって、これらの鍋が特別な意味を持つのか、それとも単なる日常の楽しみなのかはわからない。そういったことは全くわからないが、友人や家族と鍋を囲むのは楽しいのだろう。

 

一方、私は不思議に思った。なぜ日本人の姿が鍋ぞうにほとんど見られないのだろうか? 池袋で日本人が火鍋を食べる店といえば、私の頭にはすぐに小肥羊が浮かぶ。小肥羊では日本人客が多く、友人たちと賑やかに火鍋を囲むのがよくある光景だ。その日の鍋ぞうでの経験から、池袋では日本人が中国の火鍋を楽しみ、中国人が日本のすき焼きを楽しむという、文化交流が起こっていることに気づいた。日本人として、自国にいながら異国の食文化に触れるのは新鮮で、同時に異国で生活する人々が地元の食文化をどのように楽しむのかを知るのも興味深い。

 

この日の夕食は、ただの一食に過ぎなかったかもしれないが、2023年の東京で目撃したこの光景は不思議なもので、私にとっては印象深いものであった。食を通じて、異なる文化がどのように交差し、新たな形を生み出しているのを目の当たりにしたのであった。そして、異なる文化を楽しむ姿勢は人生を豊かにするのに必要なことなのだろうと思ったのであった。